国別のスペシャルティコーヒー
ガイドを書くに足るだけ詳しくまとめた 7 か国。各国について、カバーしている都市、その国の焙煎所、そしてシーンの実際の姿を紹介します。
ドイツ
582カフェ141都市83焙煎所「カウンター越しに一杯ずつ淹れてもらう」時間に慣れた目で見ると、ベルリンの店は喫茶店よりも作業場に近い。焙煎機が客席のすぐ横で回り、豆を焼いた本人がそのままカップを差し出す。掲載している82軒はすべてこの街にあり、平坦で中心を持たない地形の上に散らばっている。何軒回れるかではなく、どの地区を組み合わせるかで一日の質が決まる。地図の縮尺を信じて歩き出すと、移動だけで午後が消える。チェコ
539カフェ141都市51焙煎所プラハの店は、たいていカウンターの上でほとんどを見せてしまう。グラインダーが二台、抽出の下に秤、そして今週のフィルターが農園名と精製方法まで書かれた一枚のカード。湯を落とす手つきを眺めているうちに一杯が出てくる場面は、喫茶店のカウンターに慣れた身にはむしろ見慣れたものだろう。ただし、淹れ手と焼き手が同じ人とはかぎらず、豆の素性は訊かなければ出てこない。店ごとに変わるのは道具立てではなく、袋に刷られた焙煎所の名前だ。そして街を出たとたん、変わるのは店と店のあいだの距離のほうになる。ポーランド
495カフェ69都市90焙煎所喫茶店のカウンターで一杯ずつ落とす習慣は、豆と淹れ手の距離が近いほど面白くなる。ポーランドでは、その距離が国内で均一ではない。バルト海沿岸からビェシチャディ山地まで、濃いのは四、五都市に限られ、あとは数十の小さな町に一握りずつ散っている。焙煎所も都市に集まらず、名前を聞いたこともない町から豆が出てくることが多い。掲載は63都市・429軒だが、その重みは均等に配られてはいない。だからこの地図の使いどころは、行き先を選ぶ段階というより、着いた町でその日の一軒を決める段階にこそある。スロバキア
264カフェ68都市28焙煎所豆の袋に書かれた焙煎所の名前を確かめてから買う。ハンドドリップで淹れる人にとって、その習慣はそのまま旅の方法になる。スロバキアは稼働する焙煎所が28、地図に載る店は126軒で21都市。焙煎所は小さな町に散り、飲む場所は首都に固まっている。ドゥナイスカー・ルジュナーのDiamonds Roasteryがある村には、この地図上に一軒も店がない。だから旅程は焙煎所の住所ではなく、店のメニュー板に並ぶ焙煎所の名前から組み立てたほうが早い。イタリア
183カフェ73都市23焙煎所ハンドドリップはイタリアでも頼めば出てくる。ただし黒板には書かれておらず、注文を受けてから一杯ずつ淹れるので、座る客のための飲み物として扱われている。カウンターのエスプレッソは立ったまま一ユーロ、九十秒で終わる取引だ。スペシャルティはその二倍三倍を取り、代わりに座る時間を求めてくる。値段は掲示され、立つか座るかで変わるので、迷いどころは味の好みではなく、どこで時間を使うかという判断になる。その交換が成立する店と、昔ながらのバールに分がある町を、182軒・72都市のなかから並べた。ポルトガル
58カフェ1都市1焙煎所喫茶店のカウンターで、ネルやペーパーから一杯分が落ちきるのを待つ時間に慣れた目には、リスボンの流儀はずいぶん速く映る。厚手のカップに注がれた深煎りの短いエスプレッソ、ビカ。立ったまま一分もかけずに飲み干し、小銭を置いて出ていく。値段はおよそ七十セント。ところが数本先の通りでは、同じコーヒーという言葉が数倍の値札と、腰を下ろすための一脚の椅子を伴って出てくる。ポルトガルのスペシャルティはこの二つの習慣の隔たりのなかにあり、その隔たりはこのアトラスの上では、すべてリスボンという一つの街で測られている。オランダ
18カフェ2都市43焙煎所カウンターの向こうで一杯ずつ湯を落としてもらう——その時間に馴染んだ目には、オランダのコーヒーは少し勝手が違って映るかもしれない。ロッテルダムは1940年に街ごと焼け、コンクリートとガラスで建て直された街で、新しいものを先に試す気風がそこで根づいた。コーヒーもその一つで、古い喫茶の層の上に新しい店が重なった街とは、成り立ちの順番からして違う。Specialty Atlasのオランダ側はこの一都市だけで完結する。鉄道の乗り継ぎを考えずに一日で組み立てられる旅は、ヨーロッパではそう多くない。
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